顔の正面に空いている穴は鼻です。
ヌタウナギを含む円口類は、上下に分かれた顎を持たない無顎類の生き残りです。
約5億年前に、顎口類の祖先と分かれたとされています。
脊椎動物の進化を考える上で、円口類は重要な位置を占めるグループです。
なかでもヌタウナギは、長い進化の過程で一度も海から出たことがないとされています。
最近、ヌタウナギ(Eptatretus burgeri)とクロヌタウナギ(Eptatretus atami)のゲノムが解読され(※1、※2)、研究者の注目を集めています。
※1 Marlétaz, F., Timoshevskaya, N., Timoshevskiy, V.A. et al. The hagfish genome and the evolution of vertebrates. Nature 627, 811–820 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07070-3.
※2 Yu, D., Ren, Y., Uesaka, M. et al. Hagfish genome elucidates vertebrate whole-genome duplication events and their evolutionary consequences. Nat Ecol Evol 8, 519–535 (2024). https://doi.org/10.1038/s41559-023-02299-z.
歯をむき出したところ
歯は定期的に抜け落ちて生え変わります。
ヌタウナギの仲間はすべて海産で、これまでに80種以上が報告されています。大半の種が深海性で、生き物の遺骸を食べて暮らしています(実際には、エビなど小さな生き物を捕食することもあります)。こうしたスカベンジャー(掃除屋)は、海洋の物質循環に無くてはならない存在です。
ヌタウナギの仲間は、長さ1.4~2.5cmくらいのラグビーボール形の卵を産みます。当然ながら、卵の数は多くありません(最大でも数十個程度)。しかも、孵化するまでに1年以上かかるようです(※3)。とても気の長い生き物ですね。
※3 Ota KG, Kuraku S, Kuratani S. Hagfish embryology with reference to the evolution of the neural crest. Nature 446, 672–675 (2007). doi: 10.1038/nature05633.